昨日紹介した書籍に、以下のような記述があります。以下、引用です。
2.グループの不思議な力
・・・・グループを「媒体」とすることの奥深さ・・・・
GWの実践は、先に述べたように
グループを媒体として個人(メンバー)を援助することに焦点があてられる。実は、ここにGWの奥深さをみてとることができる。
われわれは社会生活を営む中で「グループ(集団)」に日常的に接し、また複数のグループに属している。そうしたグループ体験のなかで、グループの持つ「不思議な力」を身近に感じることがよくあるだろう。団体スポーツ競技などでチームが一つの目的に向かって取り組んでいるときに強い一体感を感じたり、グループのなかにリーダーシップといった役割分担がメンバー間に自然と生まれたり、またグループが複数の小グループに分裂したりすることはよくあることである。また、居心地のよいグループとそうでないグループがあったりすることは誰もが体験している。さらに、グループでの話し合いをしているうちに絶対に変わらないと思っていた自分の考えや意見がグラグラとしてきたり、同一グループに所属している人が同じよう態度や考え方をする傾向にあることもわれわれも体験的に知っている。
実際、グループにはこうした目に見えない「不思議な力」が働いている。グルームダイナミックス(集団力学)と呼ばれるこうしたグループの力は、メンバーである個人の思考や行動に大きな影響を与える。GWにおいては、こうした「不思議な力」をもつグループを媒体として援助することを特徴とするが、この点にGWによる援助の奥の深さがある。つまり、グループワーカーによる意図的働きかけの一方で、ワーカーのコントロールの及ばないグループの力が働くことがある。ワーカーがいくら計画的にグループに働きかけたとしても、グループというのはワーカーがあらかじめ決めたように働かない面があるということである。思いもよらない展開やハプニングが起こりうる。そこにもGWのおもしろさがある。
したがって、GWにおいては、ワーカーが必要以上にグループをコントロールするのでなく、グループやメンバーが本来的に持っている力や思いもよらない展開を最大限に生かしながらかかわっていく視点を持つことが大切となる。ワーカーによる意図的な働きかけとグループ自体がもつ「思いもよらない力」とが融合されてGWが進行していくのである。
さて、グループ体験は個人の思考や行動に大きな影響を与えるだけでなく、成長や課題の克服とグループ体験とが密接な関係にあることについても若干触れておこう。これもまたグループの持つ力である。
人間はライフサイクルを通じて何らかのグループに属し、そのグループ内の力動や相互作用関係のなかで発達課題を克服し、成長していく。最初のグループとの出会いは、家族という特殊なグループであろう。この母子関係を含んだ家族関係を基礎として、世界を広げていくことになる。初期の段階では、近隣の同世代の遊び仲間や保育所などでのグループにおいて、安全で制約の少ない遊びを通して他人との感情の交流や協力を体験し、創造性と積極性を学んでいく。学齢期には、学校でのクラスやクラブ活動といった集団生活のなかで、社会的ルール、リーダーシップ、役割分担を経験し、また気の合う友人同士のグループでは価値観を共有するようになる。青年期には、アイデンティティの確立という発達課題の克服にグループは大きな役割を果たすことになる。さらに、成人期以降においても、職場でのグループや趣味のグループ等、さらに多種多様なグループに所属するなかで自己実現や生きがいを模索することになる。
このように生涯を通じて、グループは個人の発達上のニーズを満たすのに不可欠な存在である。しかしながら、現代社会ではこうした成長のための望ましいグループ体験の機会は必ずしも十分ではない状況にある。GWの意義は、こうした個人の成長に大きな役割を果たすグループを意図的に活用して個人を援助する点にあるといえよう。
引用、ここまで。
なんとなく見えてきませんか?では、次回では、この理論と荻野メソッドを結び付けて考察したいと思います。
テーマ : ソーシャルアクション
ジャンル : 福祉・ボランティア